「目が疲れた」ってどういうこと?4つの素朴な疑問を研究から考える
「目が疲れたな」と感じることは、誰にでもあるのではないでしょうか。
でも、そもそも目が疲れるのはなぜなのでしょう?
腕や足なら筋肉が疲れるイメージがありますが、目の場合はいったいどこが疲れているのでしょうか。
そもそも、どんな状態になったら「目が疲れた」と言えるのでしょうか。毎日パソコンを使っていると、疲れに慣れることもあるのでしょうか。
身近な「目の疲れ」ですが、実はまだ十分に分かっていないこともあります。
そこで今回は、目の疲れにまつわる4つの素朴な疑問を取り上げ、眼科学の知見や国内外の研究結果から、その答えを探してみたいと思います。
研究で分かっていること、まだはっきりしていないことを一つずつ見ながら、普段何気なく感じている「目の疲れ」について考えてみましょう。
疑問1:「目が疲れた」とき、目のどこが疲れているの?
目の疲れは、特定の筋肉だけが疲れている状態とは限りません。 ピントを合わせる仕組みや、目の表面を守る涙、左右の目を協調させる働きなど、複数の仕組みが関係しています。
例えば、長時間読書をしたあとの「ピントが合いにくい感じ」と、パソコン作業後の「目がしょぼしょぼする感じ」では、関係する仕組みが異なる場合があります。
目の中では、どのようなことが起きているのでしょうか。

ピントを合わせる仕組み
近くのものを見るとき、目の中では「毛様体筋(もうようたいきん)」という筋肉が働き、水晶体の形を変えてピントを合わせています。

読書やパソコン作業など、近くを見る時間が長くなると、このピント調節の仕組みに負担がかかる場合があります。
スマートフォンも同様です。スマホを顔の近くで見ている場合、遠くを見るときよりも強いピント調節が必要になります。
ただし、スマホで目が疲れる理由がすべて毛様体筋の働きにあるわけではありません。画面との距離、見え方、涙の状態なども関係します。
また、近くを見たあとに遠くがぼやける場合も、単純な筋肉疲労だけでなく、老眼や眼鏡の度数など、さまざまな要因を考える必要があります。
目の表面を守る涙の仕組み
「目が乾く」「しょぼしょぼする」という疲れ方には、涙の状態が関係している場合があります。
私たちの目の表面は、涙の薄い膜で覆われています。この涙の膜は、まばたきによって目の表面に広がり、乾燥などから目を守っています。
ところが、画面を集中して見ていると、まばたきの回数が減ったり、まぶたが十分に閉じない「不完全なまばたき」が増えたりすることがあります。
涙の膜が不安定になると、乾燥感や刺激感、かすみなどの不快感につながります。
つまり、目がしょぼしょぼするという感覚は、目の筋肉が疲れているのではなく、目の表面の状態が関係している可能性もあるのです。
左右の目を協調させる仕組み
私たちは普段、左右の目で見た情報を一つにまとめて認識しています。例えば、本を顔に近づけると、左右の目は内側へ向きます。これは「輻輳(ふくそう)」と呼ばれる働きです。
近くを見るときには、ピント調節だけでなく、この左右の目の動きも協調する必要があります。その働きに問題がある場合、近くの文字を見続けると、目の奥の重さや頭痛などの不快感が生じることがあります。
このように、私たちが何気なく使っている「目が疲れた」という言葉には、異なる仕組みが関係しているのです。
疑問2:同じ作業でも、疲れる人と疲れない人がいるのはなぜ?

目の疲れ方には個人差があります。 その理由は、単に疲れを感じやすいかどうかではなく、目の状態や作業条件が人によって異なるためです。
例えば、夕方になると目の重さを感じる人もいれば、同じ時間パソコンを使っていても、あまり疲れを感じない人もいます。
眼鏡の度数やピント調節の状態、目の乾きやすさなどは一人ひとり違います。コンタクトレンズの使用による乾燥感なども、関係する場合があります。
こうした目の状態の違いに加えて、もう一つ興味深いことが研究で分かってきています。
本人が感じる疲れと、目の測定結果は一致する?
2026年5月、フランスの大手眼鏡・レンズメーカー、エシロールルックスオティカの研究開発部門による研究が、眼科学の学術誌『Investigative Ophthalmology & Visual Science』に発表されました。
この研究では、18〜42歳の成人60人に30分間の読書課題を行ってもらい、読書前後の変化を調べました。
測定したのは、本人が感じる目の不快感だけではありません。専用の機器を使い、眼球の動き、瞳孔の大きさ、まばたきなども記録しました。
すると、読書後には本人が感じる目の不快感が増え、眼球の動きや瞳孔にも変化が見られました。
ところが、ここで興味深い結果が出ます。
「目が疲れた」と強く感じている人ほど、目の動きなどにも大きな変化が現れるのかというと、必ずしもそうではなかったのです。
研究では、本人が感じる疲れの強さと、機器で測定した目の変化との間に、明確な関連が見られない項目が多くありました。
つまり、目の動きやまばたきなどを測定するだけでは、その人がどれほど目の疲れを感じているのか、十分に判断できないということです。
目の疲れは、本人が感じる不快感として確かに存在します。しかし、その強さを客観的な数値で表すことは、まだ簡単ではないのです。
参考研究:Guégan J. ほか(2026)
Detection of Visual Fatigue Using Eye Tracking and a Wearable Device
掲載誌:Investigative Ophthalmology & Visual Science
目の疲れを検知する「眼鏡型センサー」の研究も進んでいる
目の疲れを客観的に測ることは難しいものの、新しい技術を使った研究も進んでいます。
2026年の研究では、目の周辺の動きを検知するセンサーを組み込んだ、眼鏡型の試作装置が使われました。
この装置は、赤外線を利用して、まばたきや目を細める動きなどに伴う変化を捉える仕組みです。
取得したデータをAIで分析したところ、実験条件下では82.5%の精度で、読書前後の疲労状態を分類できたと報告されています。
ただし、これは研究段階の技術であり、日常生活でも同じ精度で判別できるかは、まだ分かっていません。
将来は、眼鏡をかけるだけで目の疲れに気づく手がかりが得られる。そんな技術につながるかもしれません。
疑問3:毎日目を酷使していると「疲れ慣れ」するの?
2019年、イタリアのトリエステ大学の研究者らが、パソコンを使う公務員3,054人を対象とした10年間の追跡研究を発表しました。
定期的な健康診断とアンケートを通して目の状態を調べたところ、目の疲れを訴える人の割合は、調査開始時の58.4%から最終時点には64.0%へ増加していました。
また、パソコン作業の経験年数と、目の疲れの訴えとの間に、統計的に有意な関連は確認されませんでした。
つまり、この研究からは、長年パソコンを使うことで目の疲れに慣れるという根拠は得られていません。
ただし、疲れの感覚に慣れるかどうかを直接調べた研究ではないため、「疲れ慣れは起こらない」とも断定できません。
仕事に慣れることと、目が疲れなくなることは別の話なのです。
参考研究:イタリア・トリエステ大学の研究者ら(2019年)
Video Display Operator Complaints: A 10-Year Follow-Up of Visual Fatigue and Refractive Disorders
掲載誌:International Journal of Environmental Research and Public Health
疑問4:目が疲れたとき、休んだりケアしたりすると違いはある?

目が疲れたと感じたとき、そのまま作業を続けるのと、途中で目を休ませるのとでは、違いがあるのでしょうか。
研究では、休憩の取り方やまばたきの習慣によって、目の不快感や一部の測定値に変化が見られた例が報告されています。
ただし、目の疲れには複数の仕組みが関わるため、すべてのケア方法が同じように役立つわけではありません。
こまめに目を休ませると、疲れ方は変わる?
パソコン作業中の目の休ませ方として、「20-20-20ルール」を聞いたことがあるかもしれません。20分ごとに、約6m先を20秒間見るという方法で、米国眼科学会も画面作業中の休憩方法として紹介しています。
実際、2022年にスペインのバレンシア大学などの研究チームが行った実験では、目の疲れを感じているパソコン利用者29人が、このルールに沿った休憩を2週間続けたところ、目の疲れや乾きなどの自覚症状が軽減しました。
さらに注目したいのが、2025年にスペインのグラナダ大学などの研究チームが発表した、休憩の取り方を比較する研究です。
24人の若年成人が40分間の読書課題を行い、次の4つの条件で目の状態を比較しました。
| 休憩条件 | 内容 |
|---|---|
| 休憩なし | 40分間続けて作業 |
| 20分後に休憩 | 20秒間の休憩を1回 |
| 10分ごとに休憩 | 20秒間の休憩を3回 |
| 自分のペースで休憩 | 必要に応じて休憩 |
結果、休憩なしの場合に比べて、10分ごとに休む条件や、自分のペースで休む条件では、目の刺激感や疲れの自覚が少ないことが報告されました。
また、近くを見続けた直後に生じる一時的な近視方向へのピントのずれも、これらの条件では小さく抑えられていました。
この実験は若い成人24人を対象としたものですが、こまめに目を休ませることで、目の疲れや不快感を軽減できる可能性が示されました。
20-20-20ルールも一つの目安ですが、決まった時間まで我慢する必要はありません。作業の区切りや自分の目の状態に合わせて、こまめに画面から視線を外すことを意識してみましょう。
参考研究:
・Talens-Estarelles C. ほか(2022年オンライン公開)
The effects of breaks on digital eye strain, dry eye and binocular vision: Testing the 20-20-20 rule
・Redondo B. ほか(2025年)
The impact of break schedules on digital eye strain symptoms and ocular accommodation during prolonged near work
デスクライト名品館がおすすめする「目のハーフタイム」
近くを見続ける作業では、短い休憩をこまめに挟む「目のハーフタイム」を取り入れてみませんか? 「5分に5秒」を目安に、目を休ませる方法や、読書・パソコン作業中に無理なく続けるコツを紹介しています。
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まばたきや温めるケアで、目の状態は変わる?
まばたきを意識したり、まぶたを温めたりすることで、目の乾きや不快感がやわらぐ場合があります。 実際に、それぞれのケアについて研究が行われています。
まばたき運動で、目の乾きや不快感が軽減
ニュージーランドのオークランド大学の研究チームは、ドライアイ症状のある人を対象に、まばたき運動の効果を調べました。
4週間の運動を終えた41人では、まぶたが完全に閉じない「不完全なまばたき」の割合が、平均54%から34%に減少。涙の膜が安定している時間も、平均6.5秒から8.1秒に延びました。
さらに、目の乾きや不快感などの自覚症状にも改善が見られました。
この研究では、まばたきを意識した運動によって、まばたきの仕方やドライアイ症状が改善する可能性が示されています。
なお、比較対象群を設けていないため、今後さらに検証が必要ですが、日常的なまばたき習慣を見直す意義を示す結果といえます。
参考研究:ニュージーランド・オークランド大学の研究チーム(2020年オンライン公開)
Therapeutic benefits of blinking exercises in dry eye disease
掲載誌:Contact Lens & Anterior Eye
まばたきの仕方も見直してみませんか?
まぶたが最後まで閉じない「浅いまばたき」は、 目の乾きに関係することがあります。 浅いまばたきが起こる理由や、 日常で取り入れやすいまばたき運動について、 こちらの記事で詳しく紹介しています。
▶ 浅いまばたきで目が乾くのはなぜ?原因とケア方法を見る
まぶたを温めるケアも、涙の状態に関係する
目元を温めるケアについても、研究でその有用性が調べられています。
まぶたには、涙の蒸発を抑える油分を分泌する「マイボーム腺」があります。温めるケアは、この油分の流れを助けることを目的としています。
2025年に発表された研究レビューでは、マイボーム腺の働きに問題がある人を対象とした7件の臨床試験を分析しました。
その結果、まぶたを温める専用機器を使ったグループでは、目の乾きなどの自覚症状や、涙の膜の安定性に改善が見られました。
この研究は、目を温めるケアが、涙の状態に関係する不快感をやわらげる方法の一つであることを示しています。
家庭で使うホットタオルも目元を温める方法ですが、研究で使われた専用機器とは温度や温め方が異なります。心地よい温度で、無理なく取り入れることが大切です。
参考研究:Ballesteros-Sánchez A. ほか(2025年)
Efficacy of eyelid warming devices as first-step treatment in meibomian gland dysfunction
掲載誌:The Ocular Surface
休んでも目の疲れが取れないときは
スマートフォンやタブレットが普及し、仕事だけでなく、買い物や調べもの、娯楽など、日常生活のさまざまな場面で近くの画面を見る機会が増えました。
パソコン作業を終えてひと息ついたつもりでも、気づけばスマホを見ている。そんなふうに、知らず知らずのうちに目を使い続けていることも少なくありません。
だからこそ、普段からこまめに目を休ませる習慣を大切にしたいものです。
一方で、十分に休んでも目の疲れが取れない場合は、眼鏡の度数や老眼、ドライアイなど、別の要因が関係していることもあります。こうした、休息を取っても症状が続く状態は「眼精疲労」と呼ばれます。
目の疲れが長引いたり、日常生活に支障が出たりする場合は、一度眼科で相談してみるとよいでしょう。
なお、急に見え方が変わったり、強い痛みやかすみが生じたりした場合は、早めの受診が必要です。
疲れ目と眼精疲労の違いや、眼科を受診する目安については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
関連記事:眼精疲労と疲れ目の違い|見逃したくないサインとセルフチェック、受診の目安
まとめ|「目が疲れた」という感覚には、いろいろな理由がある

何気なく使っている「目が疲れた」という言葉。
その背景には、ピント調節、涙の状態、両目の協調など、さまざまな仕組みが関係しています。さらに研究では、本人が感じる疲れと、機器で測定した目の変化が必ずしも一致しないことも分かってきました。
一方で、長年目を使うと疲れに慣れるのか、目の疲れを一つの数値で正確に判断できるのかなど、まだ十分に解明されていない疑問もあります。
そして、目の疲れを感じたときには、原因によって適した対処が異なります。こまめな休憩やまばたきの習慣が役立つ場合もありますが、不快感が続く場合には、目の状態を確認することが大切です。
今回の4つの疑問を通して見えてきたのは、「目が疲れた」は一つの状態を示す言葉ではないということです。
目が重い、乾く、ピントが合いにくい。
そんなとき、何が、どんな作業のあとに起きているのかを少し意識してみると、自分の目の状態や作業環境を振り返る手がかりになるかもしれません。
医学的な説明の参考資料
